内閣府税制調査会(政府税調)

政府の税制調査会はいま何を議論しているか 基礎控除の物価連動、租税特別措置のEBPM、記帳水準・財産評価(2025年秋〜2026年)

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税制のEBPMに関する専門家会合 第7回(2026年9月1日開催)
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内閣府に置かれた税制調査会(政府税調)は、2024年1月に内閣総理大臣の諮問を受けて今の期が始まり、総会の下の3つの専門家会合で、テーマごとに議論を続けています。2025年秋からは、基礎控除等の物価調整、研究開発税制などの租税特別措置の効果検証(EBPM)、記帳水準や相続税の財産評価が取り上げられました。この記事では、その議論を議事録と事務局(財務省)資料の原文でたどり、同じテーマについて令和8年度の与党税制改正大綱に書かれていることを並べます。

税制改正の手続き全体や、政府税調と与党の税制調査会の違いは、税制改正はどうやって決まるのか(しくみ解説)にまとめています。

決まるまでの流れ(時系列)

  1. 2024年1月25日 第1回総会岸田内閣総理大臣が諮問。委員15名・特別委員22名を発令し、翁委員を会長に互選。
  2. 2024年6月4日 第3回総会「専門家会合の設置等について(案)」で3つの専門家会合の設置を諮る。
  3. 2025年5月15日 第5回総会基礎控除等の額の適時の引上げの方策から、ライフコースの専門家会合で論点を整理する案(資料 総5-4)。
  4. 2025年11月12日 EBPM専門家会合 第6回研究開発税制を税務データで検証した財務省資料。
  5. 2025年11月13日 ライフコース専門家会合 第3回/デジタル化・納税環境整備専門家会合 第4回物価調整の頻度と指標、記帳水準、財産評価など。
  6. 2025年11月18日 第6回総会高市内閣総理大臣が挨拶(議題はこの挨拶のみ)。
  7. 2025年12月19日 令和8年度与党税制改正大綱自由民主党・日本維新の会が決定。
  8. 2026年9月1日 EBPM専門家会合 第7回租税特別措置の適用実態調査報告書と中小企業税制。

議事録と資料の原文

今の期の発足(2024年1月)

第1回総会で、岸田内閣総理大臣から翁会長に諮問文が手渡されました。

デフレからの完全脱却と経済の新たなステージへの移行を実現するとの基本的考え方の下、経済成長と財政健全化の両立を図るとともに、少子高齢化、グローバル化、デジタル化等の経済社会の構造変化に対応したこれからの税制のあり方について審議を求める。

(出典:第1回税制調査会[総1-1]諮問、令和6年1月25日)

同じ回の議事録によると、委員15名・特別委員22名が発令され、梶川委員・吉村委員の推薦で翁百合委員が会長に互選され、翁会長が清家篤委員を会長代理に指名しています。委員の任期は、税制調査会令に次のように定められています。

第三条 委員の任期は、三年とする。

(出典:内閣府「税制調査会に関する政令の規定」税制調査会令 第三条)

内閣府のページに載っている最新の名簿は「令和8年7月1日現在」のもので、会長は翁百合氏、会長代理は清家篤氏です。第1回の名簿にあった刀祢館久雄委員に代わり、大隅隆委員が載っています。ライフコースの専門家会合 第3回の議事録では、大隅委員は2025年11月13日付で任命されたと説明されています。

3つの専門家会合(2024年6月)

第3回総会で翁会長が示した案は、次のように書いています。

各専門家会合における議論は、総会に報告等を行うこととする。

(出典:第3回税制調査会【総3-6】専門家会合の設置等について(案))

議事録では、この案に「首肯する委員あり」とされ、翁会長がEBPMの座長に赤井伸郎特別委員、ライフコースの座長に佐藤英明特別委員、デジタル化・納税環境整備の座長に岡村忠生特別委員を指名しています。

第6回総会(2025年11月18日):高市総理の挨拶

第6回総会の次第の議題は「内閣総理大臣挨拶」だけでした。高市内閣総理大臣は次のように述べています。

この点、例えば、所得税の基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置について議論を進めることとしております。

この調査会におかれましては、税制にかかるEBPMの議論を進められていると聞いておりますけれども、関連省庁とも連携しながら、更に議論を進めていただけたらありがたく存じます。

(出典:第6回税制調査会 議事録。高市内閣総理大臣の発言)

終了後の記者会見で、取りまとめの予定を問われた翁会長はこう答えています。

どのタイミングでどういう形で提言などを出すかは、まだ決まっておりませんで、これから委員の先生方とまた御相談しながら決めていくことになります。いずれにしても、専門家会合でいろいろ議論しておりますので、何らかの形でまとめていきたいと思っております。

(出典:第6回税制調査会 記者会見録。翁会長の発言)

基礎控除等の物価調整(ライフコース専門家会合 第3回、2025年11月13日)

令和7年度税制改正法の附則第81条が、物価の上昇等を踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げる方策の検討を求めていることを受け、第5回総会(2025年5月15日)で事務局は次の案を示していました。

その際、まずは、法律により明示的に検討が求められている、物価の上昇等を踏まえた基礎控除等の額の適時の引上げの具体的な方策から検討することとしてはどうか。

(出典:第5回税制調査会[総5-4])

第3回の財務省資料は、5月の第2回で示した3つのイメージを再掲したうえで、論点を示しました。

基礎控除等の物価調整の3つのイメージ。イメージ1は毎年物価調整、イメージ2は3年おきなど定期的に物価調整、イメージ3は毎年点検し物価上昇率が5%を上回った際に調整。それぞれの例と特徴(システム改修の負担や予測可能性)を並べた資料
出典:財務省 ライフコースに中立な税制に関する専門家会合(第3回)【活3ー1】説明資料「所得税について」12ページ

物価調整の頻度は、どのように設定するか。毎年、定期的(例えば、生活保護基準額の見直しにあわせて)、参照指標の変化が一定程度累積した際(例えば、最後の見直しからの物価上昇率が5%を上回った際)などについて、どのように考えるか。

(出典:【活3ー1】15ページ「本日ご議論いただきたい論点」)

頻度については、委員の意見が分かれました。

恣意性なくタイムリーに毎年淡々と反映していく、上にも下にも反映していくことが一番よいと考えます。

(出典:同 議事録。武田特別委員の発言)

そういう意味では3年という期間を置くことで、ある程度予見可能性を持たせることができる。

個人的にはイメージ2がいいのかなと考えています。また、指標については、やはりCPIが望ましいのかなと思います。

(出典:同 議事録。諸富特別委員の発言)

第1点目については、源泉徴収、年末調整というところでは、毎年は非常に難しくて、せいぜい2、3年に1回、その頃にシステムベンダーの方々に御協力いただいてやるということになるでしょう。しかし、国に直接確定申告してくる人についてはそういう問題がないので、そうだとするともう毎年やってあげると。

(出典:同 議事録。岡村特別委員の発言)

翁委員はイメージ1(毎年)を「理想に近い」と述べています。熊谷委員は、期限が来るたびに見直すルールの法定化を提案し、令和7年度改正の基礎控除の上乗せ特例について次のように述べました。

現行は令和7年、8年に限った措置とされておりますが、令和9年度税制改正の際には、賃金・物価上昇の動向を点検し、必要がなければ廃止すべきであると考えます。

(出典:同 議事録。熊谷委員の発言)

会合後の記者会見で、事務局は次のように説明しています。

どう生かすかについては、今日のメインのテーマであった基礎控除等の物価を踏まえた引上げの方策については、令和7年度の税制改正法の附則でも検討すると定められているので、年内、一定の方向性を含めて、今後、党税調でも議論がされると思います。

(出典:同 記者会見録。事務局の発言)

その後の令和8年度与党税制改正大綱には、次の仕組みが書かれています。

・ 基礎控除の本則部分については、見直し前の控除額に、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることで調整する。

(出典:自由民主党・日本維新の会「令和8年度税制改正大綱」4ページ)

大綱は、この仕組みで基礎控除の本則を58万円から62万円に引き上げるとしています。大綱には、政府税調の議論との関係は書かれていません。

研究開発税制のEBPM(EBPM専門家会合 第6回、2025年11月12日)

財務省は、法人税の申告データを使って、試験研究費の増加割合の分布を示しました。

令和4年度に研究開発税制を使った企業の増減試験研究費割合の分布と控除率カーブを重ねたグラフ。0%前後の企業が最も多く、控除率の傾きが変わる9.4%の前後で分布に変化がないことを示す財務省資料。経済産業省アンケートの回答割合も載っている
出典:財務省 税制のEBPMに関する専門家会合(第6回)【証6-1】説明資料「租税特別措置の検証(研究開発税制)」16ページ

物価上昇局面において、試験研究費の増加割合に基づく現行の控除割合や控除上限はインセンティブ機能を十分に発揮しないのではないか。

(出典:【証6-1】33ページ「まとめ(本日ご議論いただきたい論点)(案)」)

委員からは、制度の縮小を求める意見と、税制の役割を認める意見の両方が出ています。

以上の点を総合的に勘案すると、制度としての規模の縮小さえ考えるべき状態であると思います。

(出典:同 議事録。熊谷委員の発言。控除率カーブや控除上限の変動措置が研究開発の量を増やすことにも十分寄与していないとの見方を述べた後の結論部分)

また、使い道が限定される補助金と違い、企業の目利き分野や基礎研究についても、税制によってサポートされている面はあるのではないかと考えます。

(出典:同 議事録。武田特別委員の発言。武田特別委員は同じ発言で、政府としてEBPMを行い説明責任を果たす必要があるとも述べています)

会合後の記者会見で、事務局は政府税調としての取りまとめについて次のように答えています。

今のところ、政府税調で意見をまとめるということを予定していることはありません。与党の税調で御議論いただく素材としていく可能性があるということは、先ほどお答えしたとおりでございます。

(出典:同 記者会見録。事務局の発言)

令和8年度与党大綱は、研究開発税制について次のように書いています。

研究開発税制については、EBPMの観点から、データに基づく分析を踏まえ、企業が試験研究費を増加させるインセンティブを更に強化する。一般型の控除率カーブ及び控除上限の変動措置について、近年の物価上昇等の状況も踏まえ、控除率の上限は維持しつつ、試験研究費の増加を促す観点から所要の見直しを行う。

(出典:「令和8年度税制改正大綱」11ページ)

記帳水準と財産評価(デジタル化・納税環境整備専門家会合 第4回、2025年11月13日)

財務省が「事業者のデジタル化と記帳水準の向上」「税務執行に関する諸課題」、国税庁が「財産評価を巡る諸問題」を説明しました。記帳水準については、次の意見が出ています。

現時点では、これにこだわらずに、会計ソフトの利用そのものを促すようなインセンティブの措置を検討するのも、記帳水準の向上を堅持するためにはよいのではないかなと考えております。

(出典:同 議事録。太田特別委員の発言)

どれぐらいの規模までの事業者に対してデジタル化を普及させるのかというのは、ある程度、実態を見て、目標を決めるべきだろうと思います。

(出典:同 議事録。阿部特別委員の発言)

貸付用不動産や不動産小口化商品の相続税評価については、次の意見がありました。

最後のページでお示しくださった数字から見たときに、これは看過できない贈与税、相続税の不公平を生んでいるものであって、早急に厳正に対処すべきであると考えます。

(出典:同 議事録。佐藤特別委員の発言)

納税者にとっての財産評価基本通達の意義は予測可能性にあると考えています。その意味で、総則6項に頼らずに、財産評価基本通達に問題がある箇所があれば丁寧に修復して、時代に合った内容にアップデートしていただきたいと思います。

(出典:同 議事録。太田特別委員の発言)

記者会見で、事務局は次のように述べています。

問題意識を持っているところでありますが、今回は、目の前の改正としてこれをやるといった決まった形で議論をしているということではございません。

(出典:同 記者会見録。事務局の発言)

令和8年度与党大綱には、同じテーマについて次の記載があります。

貸付用不動産の市場価格と通達評価額との乖離の利用によって相続税や贈与税の税額が大幅に圧縮されている事例が把握されていることを踏まえ、納税者の予測可能性を確保し、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から、関係団体等の意見を聴きつつ、貸付用不動産の評価方法の見直しを行う。

(出典:「令和8年度税制改正大綱」21ページ)

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化や、同族会社や給与所得者との課税のバランスを踏まえ、個人事業主の勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討を進める。

(出典:「令和8年度税制改正大綱」150ページ「第三 検討事項」)

EBPM専門家会合 第7回(2026年9月1日)

2026年に入って開かれた政府税調の会議は、確認した時点ではこの回だけです。議題は「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」と「中小企業税制」で、財務省の資料1は、冒頭に令和8年度与党大綱の次の部分を引用しています。

一方、既に補助金等の交付先名が原則として公表されていることや、諸外国において租税の特別措置の適用企業名が公表される仕組みが整備されている例があることを踏まえ、一層の透明化を図る観点から、適用企業名の公表について、早期に具体化を図る必要がある。企業の経営戦略に与える影響や国・企業双方の事務負担等にも配慮しつつ、具体化に向けた検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得る。

(出典:【証7-1】財務省説明資料2ページ。原文は「令和8年度税制改正大綱」10ページ)

資料2(中小企業税制)は、中小法人の所得800万円以下に適用される特例税率(15%)の適用期限を令和9年3月31日としたうえで、次のように書いています。

時限的な特例税率(19%→15%)は、中小企業に特定の行動変容(投資や研究開発など)を促す仕組みとはなっておらず、利益計上法人に対して、一律▲32万円等の減税効果が生じるもの。

(出典:【証7-2】財務省説明資料7ページ)

内閣官房租税特別措置・補助金見直し担当室の資料3は、各府省庁による租税特別措置の自己点検について、今回の対象を令和8年度末までに期限が来る措置など(国税50措置程度、地方税70措置程度)と説明しています(【証7-3】5ページ)。

この回の議事録と記者会見録は、2026年9月13日に確認した時点で掲載されていません。委員の発言は確認できていません。

論点になったこと

  • 物価調整の頻度:毎年(武田特別委員、翁委員)、3年ごと(諸富特別委員)、源泉徴収と確定申告で分ける(岡村特別委員)と分かれました。指標は消費者物価指数を挙げる発言が多く、奥平委員は実質賃金の確認も必要だと述べています。
  • 研究開発税制:規模の縮小まで考えるべきとの発言(熊谷委員)と、税制の役割を指摘する発言(武田特別委員)がありました。
  • 財産評価:早急な対処(佐藤特別委員)と、通達の見直しによる予測可能性の確保(太田特別委員)を求める発言がありました。

いまどの段階か

政府税調は、専門家会合でテーマごとに議論している段階で、答申・中期答申・論点整理などの取りまとめは、2026年9月13日に確認した時点で出ていません。総会は2025年11月18日の第6回が最新で、税調のトップページの「今後の予定」は「未定」です。ライフコースとデジタル化・納税環境整備の専門家会合は、2025年11月の回のあと開かれていません。

2024年1月25日の第1回総会で翁会長は「今後3年間」と述べており、委員の任期は政令で3年です。

この先の流れ

  • 政府税調:会長は、提言などを出す時期と形は委員と相談して決めると説明しています(第6回総会 記者会見)。EBPM専門家会合の事務局は、政府税調で意見をまとめる予定は「今のところ」ないと答えています(第6回 記者会見)。
  • 税制改正:適用企業名の公表は、与党大綱で「令和9年度税制改正において結論を得る」とされています。中小企業の特例税率は令和9年3月31日が適用期限です。与党の税制改正大綱は例年12月にまとめられており、令和8年度分は2025年12月19日でした。EBPM専門家会合 第6回の記者会見で、事務局は、政府から与党の税制改正プロセスで説明する機会に「こうした資料とか、どういった御意見をいただいているとか、そういうことを御紹介するということはあり得る」と述べています。

経過

  1. 第1回総会。岸田内閣総理大臣が諮問。委員15名・特別委員22名を発令、翁委員を会長に互選
  2. 第3回総会。EBPM、ライフコースに中立な税制、デジタル化と納税環境整備の3つの専門家会合の設置を諮る
  3. 第5回総会。基礎控除等の額の適時の引上げの方策から、ライフコースの専門家会合で論点を整理する案を事務局が提示
  4. EBPM専門家会合 第6回。研究開発税制を税務データで検証する財務省資料
  5. ライフコース専門家会合 第3回(基礎控除等の物価調整)、デジタル化と納税環境整備専門家会合 第4回(記帳水準・財産評価など)
  6. 第6回総会。高市内閣総理大臣が挨拶
  7. 自由民主党・日本維新の会が令和8年度税制改正大綱を決定
  8. EBPM専門家会合 第7回。租税特別措置の適用実態調査報告書、中小企業税制

出典

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