厚生労働省労働政策審議会 労働条件分科会

労働基準法の見直し(労働時間法制など)は、労働政策審議会でどう議論されているか

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厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会では、2025年1月から、労働基準法を中心とする「労働基準関係法制」の見直しが議題になっています。出発点は「労働基準関係法制研究会」の報告書で、連続勤務の上限、勤務間インターバル、副業・兼業の割増賃金、時間外労働の上限規制、裁量労働制などが論点になってきました。

2026年9月13日時点で、分科会のページに建議などの取りまとめや法律案要綱の諮問は載っていません。9月16日の第211回の議題に「労働基準関係法制について」が入っています。委員の区分(公益代表・労働者代表・使用者代表)は、議事録の出席者欄と委員名簿によります。

決まるまでの流れ(時系列)

  1. 2025年1月8日 研究会報告書厚生労働省が「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表
  2. 2025年1月21日 第193回事務局が報告書を報告
  3. 2025年2月28日 第194回事務局の進め方(案)。年内を目途に取りまとめ
  4. 2025年3月〜12月 第195回〜第206回論点ごとに議論。第206回までに取りまとめは出ず
  5. 2026年3月13日 第207回事務局が働き方改革の「総点検」の結果を報告
  6. 2026年7月14日 第210回事務局が労働市場改革分科会のとりまとめなどを報告
  7. 2026年7月21日 閣議決定骨太の方針2026・日本成長戦略・規制改革実施計画
  8. 2026年9月16日 第211回(予定)議題に「労働基準関係法制について」

出発点:労働基準関係法制研究会の報告書

厚生労働省は2025年1月8日、働き方改革関連法(平成30年法律第71号)の附則第12条に基づく労働基準法等の見直しの検討などを目的とした研究会(座長は荒木尚志・東京大学大学院法学政治学研究科教授)の報告書を公表しました。

報告書は、連続勤務について、36協定に休日労働の条項を設けた場合も含め「13 日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設けるべきとしています(40ページ)。労働基準法上の「労働者」の判断基準は、専門的な研究の場を設けて検討すべきとしています(12ページ)。ほかの主な提言は次のとおりです。

勤務間インターバル

このような現状を踏まえ、本研究会としては、抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考える。

つながらない権利

このような話し合いを促進していくための積極的な方策(ガイドラインの策定等)を検討することが必要と考えられる。

副業・兼業の割増賃金

こうした現状を踏まえ、労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては、通算を要しないよう、制度改正に取り組むことが考えられる。

(出典:労働基準関係法制研究会報告書 42ページ、44ページ、49ページ)

報告書は「おわりに」で、早期に取り組むべきとした事項を中心に、公労使三者構成の労働政策審議会で議論が深められることを期待するとしています(50ページ)。

分科会での議論(2025年)

2025年1月21日 第193回:日程の目標

報告書の報告を受けて今後のスケジュールを問われた事務局は、次のように答えています。

ただ、1つの大きな目標といいますか、節目といたしましては、仮に法改正を必要とするような内容について公労使三者の御意見がまとまりますれば、国会に法案の提出ということになるわけでありまして、それを一つの目標と考えますと、例えば来年の国会に法案を提出するということを考えますれば、年内ないし来年の年明け早々には一定の結論を得られるような御議論をお願いしたい。

(労働条件政策課長。出典:第193回 議事録)

第194回(2月28日)の事務局資料「今後の議論の進め方(案)」には、次の記載があります。

・ 年内を目途に議論の取りまとめを目指すこととしてはどうか。

(出典:第194回 資料No.1 1ページ)

第201回(8月19日)と第202回(9月4日)には「各側委員からの主な意見の整理(案)」が示されました。第202回では、事務局が骨太の方針2025の次の記載を示し、働き方改革の「総点検」を行うと報告しています。

働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて、検討を行う。

(出典:第202回 資料No.4 1ページ)

2025年10月27日 第204回:連続勤務とインターバル

事務局資料の論点は、法定休日、連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利の4つです(第204回 資料No.1)。この回では、委員が触れた総理指示について、労働基準局長が次のように説明しました。

御指摘の総理指示につきましては、就任会見におきまして厚生労働大臣から、労働時間規制については、総理から、心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う。働き方改革を推進するとともに、安心して働くことができる環境を整備するという指示があったと答弁しているところでございます。

(岸本労働基準局長)

連続勤務規制については、次の意見が出ています。

こうした異常な働かせ方ができる仕組みは早急に変えていくべきだということ自体は、おそらく委員の皆さんの共通認識だと思っておりますし、資料No.2の8ページの下段にあるような、36協定による休日労働を含めて禁止をする、連続勤務日数の規制を罰則付で設けていくことが必要ではないかと考えているところでございます。

(冨髙委員。労働者代表)

そうした場合の対応として、連続勤務の抑制ルールを置いた上で例外を認めるという対応も考えられますが、そもそも例外的に連勤を認めるべき事例は法で規定し切れるほど限定的ではなく、予測できない突発的な事象もあり得ることから、法律などで限定して記載することは難しいと考えます。

(田中委員。使用者代表)

勤務間インターバルについては、次の意見が出ています。

また、44ページについて、繰り返しになりますけれども、諸外国でも休息時間を11時間とする制度設計がなされているということを踏まえますと、必要十分な睡眠や生活時間の確保のためにも、11時間を基本として勤務間インターバル制度の義務化を検討していくべきではないかと考えておりますので、意見として申し上げます。

(櫻田委員。労働者代表)

そうしたノウハウ的な運用事例を横展開しながら制度導入を進めるべきであり、拙速な画一的な法的な規制というのは、制度の実効性が上がらないおそれがあり、強く反対したいと思っております。

(鈴木委員。使用者代表)

私自身は、勤務間インターバル制度の労働基準法への導入と義務化が適切と考えますが、使用者側からの多数の御意見を伺い、実現は容易でないと感じたところではございます。

(水島委員。公益代表。出典:いずれも第204回 議事録)

2025年11月18日 第205回:副業・兼業の割増賃金

事務局資料は、副業・兼業を行う労働者の割増賃金の支払いに係る労働時間の通算の在り方と、その健康確保を論点に挙げました(第205回 資料No.1-1)。

中小企業においては、副業・兼業時の労働時間通算は難しいために利用が進まないという声も多く、さらなる利用促進のため、割増賃金については、通算管理の適用外とする方向での検討が必要です。

(鳥澤委員。使用者代表)

そのような中で、健康確保を前提にするとしても、先ほど来出ている割増通算をなくすということは、単に使用者の使い勝手がよくなるだけの見直しではないかと考えます。

(佐藤(好)委員。労働者代表。出典:いずれも第205回 議事録)

2025年12月24日 第206回:上限規制と裁量労働制

事務局資料の論点は、時間外・休日労働の上限規制、週44時間の特例措置、年次有給休暇、裁量労働制です(第206回 資料No.2-1)。冒頭、冨髙委員は報道に触れて次のように述べています。

上限規制の発言に入る前に1点申し上げたいことがございまして、昨日より、労基法改正に関する次期通常国会への提出を見送るという報道が複数なされており、その中では、労働時間規制について、来年の成長戦略や「骨太の方針」の策定に向けて日本成長戦略会議の中で検討を行うことも報道されております。

上限規制については、次の意見が出ています。

改めて、労働時間の規制緩和ではなく、働き方改革の着実な進展に向けて、時間外労働の上限規制の段階的・計画的な引下げを含め、実効性を高める方向での検討・議論を行うべきだと考えております。

(冨髙委員。労働者代表)

また、事業に多大な影響を及ぼす強い規制であるということを考えますと、先ほどおっしゃられた上限規制を段階的・計画的に引き下げる、そうした見直す方向での議論をすることについても、慎重さが強く求められると思っています。

(鈴木委員。使用者代表)

こうしたことからも、現行の時間外労働の上限規制は堅持すべきものと考えております。

(田中委員。使用者代表)

裁量労働制については、次の意見が出ています。

また、論点にも記載のとおり、そもそも2024年に見直しを行ったばかりということでございまして、改正内容を含めた適正運用を徹底することが非常に重要だと考えており、拡大を検討する必要はないと考えているところでございます。

(冨髙委員。労働者代表)

ぜひとも対象業務の拡大に向けた議論をこうした場で進めていくことができればと改めて考えております。

(鬼村委員。使用者代表)

単純集計ではそうなのですが、より精緻な分析で見えてきたことは、裁量労働制適用者でも、裁量がない人たちは健康状態が悪いということが見えています。

(黒田委員。公益代表。出典:いずれも第206回 議事録)

この回で取りまとめは示されず、事務局は次回の日程を「調整の上、追ってお知らせ」するとしました。

2026年:総点検と閣議決定

2026年3月13日 第207回:総点検の結果

事務局は、労働者3,000人へのアンケート調査と、企業327社などへのヒアリング調査の結果を報告しました。

労働時間を「増やしたい」が10.5%、「このままで良い」が59.5%、「減らしたい」が30.0%という結果でございました。

(労働条件政策課長)

労働者3,000人へのアンケートで、労働時間を増やしたい約10.5%・このままで良い約59.5%・減らしたい約30.0%と、増やしたい人の内訳(所定労働時間や年収、月80時間以内か超えるか)と、増やしたい理由の割合をまとめた図
出典:厚生労働省「働き方改革の「総点検」について」(第207回労働条件分科会 資料No.1)1ページ「働き方改革関連法施行後5年の総点検(結果概要)」の左半分

委員からは、次の意見が出ています。

また、9割以上の方が原則の45時間以下が妥当だと考えていることからも、やはり長時間労働の是正が望まれていると思っているところです。

(冨髙委員。労働者代表)

そして、そのような多様な労働者の声に応えるためにも、一律の画一的な規制を法律・制度として定めるのではなく、企業が労働者のニーズをしっかり把握しながら柔軟な運用ができるようにすることが重要と考えます。

(田中委員。使用者代表)

こうした希望からは、上限規制を緩和する、それを基礎づける立法事実は、私自身は見いだせないと思っています。

(神吉委員。公益代表。出典:いずれも第207回 議事録)

事務局(労働条件政策課長)は、日本成長戦略会議の下に設けられた労働市場改革分科会の議論も踏まえて本分科会で具体的な議論を求めていくことと、その検討状況を分科会に適宜報告したいことを述べています。

2026年7月14日 第210回:労働市場改革分科会のとりまとめと閣議決定

第210回では、松下総務課長が、労働市場改革分科会が6月2日に公表したとりまとめを報告しました。とりまとめには、勤務間インターバルなどについて次の2つの意見が並んでいます。

勤務間インターバル制度や連続勤務規制は、労働者の休息や生活時間を確保するために重要な制度であるが、現行の努力義務の下や現行の変形週休制の下では労働者の健康確保の観点から限界があり、勤務間インターバル制度の義務化や長期の連続勤務の制限などについて、例外措置や代償措置も含め検討を進めるべき、つながらない権利の導入も検討すべきとの意見があった。

もう1つの意見:

勤務間インターバル制度について、年・月単位の対応に加えて更に日単位での規制を課すことは業務への柔軟性を欠く、各社の実態に応じた柔軟な制度設計が可能となる方向で検討することが重要であるとの意見があった。

(出典:第210回 資料No.2-1 15ページ)

第210回の資料ページに掲載された別紙によると、2026年7月21日に閣議決定された日本成長戦略には次の記載があります。骨太の方針2026にも、労働時間法制等を夏以降の労働政策審議会で議論するとの記載があります。

心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制等に係る政策対応について、2026年夏以降の労働政策審議会において議論を行う。

連続勤務規制などについては、次の記載です。

また、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、「つながらない権利」の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進める。

(出典:第210回 (別紙)「経済財政運営と改革の基本方針2026」等について のうち「日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)」)

同じ別紙の規制改革実施計画(令和8年7月21日閣議決定)では、裁量労働制の対象の在り方の見直しについて、実施時期が「令和8年検討開始、早期に結論、結論を得次第速やかに措置」とされています。

委員の意見は次のとおりです。

その実現のためには、「働き方改革」の取組をより一層前進させることが必要でありまして、だからこそ、労側としては、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の義務化、「つながらない権利」の法制化などの検討に注力すべきであるということを繰り返し発言してきたところでございます。

(菅村委員。労働者代表)

今後、濫用防止措置と対象の在り方の両面から議論していくことになると思いますが、その際、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえた検討を進めていくことが重要と考えます。

(田中委員。使用者代表。裁量労働制について)

先ほどの労働市場改革分科会等では労政審において議論を行う必要があると明言されていますので、今後さらに本分科会において一層議論を深めていければと思っております。

(山川分科会長。出典:いずれも第210回 議事録)

法案の提出

厚生労働省の「第221回国会(令和8年特別会)提出法律案」のページに載っている法律案は5本(健康保険法等、社会福祉法等、労働者災害補償保険法等、ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制、予防接種法)で、労働基準法の改正案はありません。衆議院の「第221回国会 議案の一覧」にも見当たりません(いずれも2026年9月13日確認)。

いまどの段階か

項目 2026年9月13日時点の状況 根拠
研究会報告書 2025年1月8日に公表 厚生労働省の公表ページ
分科会での議論 2025年に論点ごとに議論。2026年は第207回で総点検、第209回・第210回で労働市場改革分科会等の報告 分科会のページ、議事録
建議などの取りまとめ 分科会のページに掲載なし 分科会のページ
法律案要綱の諮問・答申 分科会のページに掲載なし 分科会のページ
法案の提出 第221回国会の提出法律案に労働基準法の改正案なし 厚生労働省・衆議院のページ
政府の方針 労働時間法制等は2026年夏以降の労働政策審議会で議論 日本成長戦略(2026年7月21日閣議決定)

この先の流れ

厚生労働省の開催案内によると、第211回分科会は2026年9月16日10時から開かれ、議題は「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」と「労働基準関係法制について」です。資料は開催までにホームページに掲載するとされており、9月13日時点では分科会のページにまだ載っていません。

分科会での取りまとめ、法律案要綱の諮問、国会への法案提出の時期は、今回確認した資料には書かれていません。

経過

  1. 厚生労働省が「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表
  2. 第193回労働条件分科会。研究会報告書を事務局が報告
  3. 第194回。事務局が議論の進め方(案)を提示(夏を目途に中間的に整理、年内を目途に取りまとめ)
  4. 第201回。事務局が「各側委員からの主な意見の整理(案)」を提示(第202回で追記)
  5. 第202回。事務局が働き方改革の「総点検」の実施を報告
  6. 第204回。法定休日・連続勤務規制・勤務間インターバル・つながらない権利を議論
  7. 第205回。テレワーク等・副業兼業・管理監督者・労働時間の情報開示を議論
  8. 第206回。上限規制・週44時間の特例措置・年次有給休暇・裁量労働制を議論
  9. 第207回。事務局が総点検の結果を報告
  10. 日本成長戦略会議 労働市場改革分科会がとりまとめを公表(第210回の事務局説明による)
  11. 第210回。事務局が労働市場改革分科会のとりまとめ、骨太の方針2026(案)等を報告
  12. 骨太の方針2026・日本成長戦略・規制改革実施計画を閣議決定。労働時間法制等は夏以降の労働政策審議会で議論するとした
  13. 第211回労働条件分科会(予定)。議題に「労働基準関係法制について」

出典